他人からの保護(世話)や是認(保証)を得ようとする依存的な性格構造を依存性人格障害(dependent personality disorder)と呼びます。最大の特徴は、“自分の人生に対する主体的責任”から逃れようとする点で、常に受動的で無力な態度を取ることで他人の世話・是認・愛情を引き出そうとします。その根底にあるのは「私一人ではこの現実社会を生き抜くことはできないだろう、私には絶えず私の人生の責任をすべて引き受けてくれる保護者が必要である」という自己否定的な認知です。依存対象は母親や配偶者、恋人などになります。

依存性人格障害(DPD)の行動

受動的(消極的)な態度によって面倒見の良い相手(無力な人を放っておけない相手)をコントロールします。そして、頼りになる相手から見捨てられることを極端に恐れ、常にその相手から嫌われないようにするために従属的で消極的な態度を取るのがとくょうです。

他人と対等な立場に立つために自分の能力や技術を高めることには関心がなく、「他人よりも弱い立場」にあることを強調して他人からできるだけ手厚い保護や支援を得ることを望みます。そのため、自己主張と能力の発揮をできる限り抑制します。彼らにとって自己主張や能力のアピールは「精神的・経済的自立の顕示」に当たり、自分が自立可能であることを示すことで、「他人の世話や是認」を失うことを恐れるのです。

自分の人生に対する主体的な責任を放棄したいという異常なまでの依存性・受動性は、社会的・心理的なデメリットを拡大します。近年問題となっている引きこもりやニートの中には依存性人格障害(DPD)が見られます。

依存性人格障害(DPD)になる要因

なぜ、依存性人格障害(DPD)になるのか? そこには「自分の本当の適応力・精神力」に対する根深い自信の欠如です。この原因は、主に幼児期の早期の発達過程における母子関係の中で、依存性を強めるような何らかの問題があったと考えられています。

フロイトが提唱した、0~1歳6ヵ月頃の「口唇期」の発達段階にある乳児は完全に無力で、母親の全面的な保護を必要とします。
そして、自分と母親が異なる個体であることを認識することができません。しかし、自分の空腹(死の不安)や孤独(寂しさ)を適切に癒してくれる母親(自己対象)に全面的に依存することで安心感を得ることができます。泣き叫べば母親が抱きしめてくれる。そんな反応によって「魔術的思考」を身に付けるのです。依存性人格障害(DPD)には、この時期の乳児の欲求が見られます、口唇期へのリビドーと固着、退行(精神発達上の障害)が、主体責任や独立心をスポイル(放棄)された依存性人格障害(DPD)の形成要因の一つなのです。

同じようなことが、メラニー・クラインが提唱した対象関係論においても言われています。口唇期の乳児が無意識に抱く「良い乳房(部分対象)」と「悪い乳房(部分対象)」へのファンタジーは、「抑うつポジション」と呼ばれる3ヵ月~12ヵ月への精神発達段階において、「悪い乳房」への破壊衝動となります。この段階で「良い乳房」と「悪い乳房」は統合されるのですが、本当は優しい母親を「悪い乳房」として傷つけようとしたことに対して抑うつ感をが芽生えます。ここで「対象喪失(母親喪失)の悲哀」と「幼児期全能感の弱体化」が起こり、愛する人を傷つけたことによる悲哀が「見捨てられ不安」につながるのです。この不安感が思春期以降まで蔓延した場合、依存性人格障害(DPD)が発生するリスクが高まるとされています。

依存性人格障害(DPD)のタイプ

依存性人格障害(DPD)には5つのタイプがあります。

■不安を与えるタイプ

自分の無力さや不幸な末路を周囲に伝え不安感情を与えます。

■適合的タイプ

他者からの世話と愛情を引き出すために自分が不快なことでも我慢して行います。

■未成熟タイプ

人格的成熟や精神的自立から遠ざかり、自分の人生に対する責任を放棄します。

■自己無きタイプ

自己アイデンティティを意図的に拡散させて、自分の人生を依存的に融合しようとします。

■無能タイプ

自発的な行動力や精神的なエネルギーが決定的に不足し、対人関係や職業活動へのモチベーションが低い。

DSM-IVによる診断基準

以下の8つの項目のうち5つ以上が当てはまる場合、依存性人格障害(DPD)と考えられます。

1.日常の些細なことでも、他人から有り余るほどの助言と保証がなければ決断できない。
2.自分の生活のほとんどの主要な領域で、他人に責任をってもらいたがる。
3.他人の支持または是認を失うことを恐れて、他人の意見に反対を表明することが困難である。
4.自分の判断や能力に自信がないため、自分で計画を立てたり物事を決めることができない。
5.他人からの愛情や支持を得るために、自分の不快なことでもやってしまうことがある。
6.自分で自分のことができないという強い恐怖や無力感を感じている。
7.親密な関係が終わったときに、自分を世話して支えてくれる別の関係を必死で求める。
8.自分が世話されずに放っておかれるという恐怖に、非現実的なまでに囚われている。

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